現在、ある企業の買収を検討しています。
あらゆるリスクを考慮したうえでの判断ですが、やはり「もし失敗したら…」と不安な気持ちがよぎります。もし買収を失敗したらどうなりますか?
M&Aの買い手の場合、会社を買うとなると1億を下らない価格になる事は中堅中小企業においては日常茶飯事である。そういった高い買い物故に、中堅中小企業が会社を買うというのは絶対に失敗できない、一大意思決定なのだと思う。
買い手のあなたにアドバイスをさせていただくとすると、最悪を想定して意思決定をして欲しい、という事である。
株式譲渡にて株式を譲り受ける場合、取得した株式は、取得費用と合算されて貸借対照表上の投資有価証券の欄に計上される。そう、M&Aにより株式を取得するという事は、まさに株式を買うという事なのである。
通常、投資に回しても良い資金というのは会社の内部留保にて賄われている金額が妥当と言われる。なぜなら、それ以内の投資であれば最悪それが0になっても債務超過に陥るという事は無いからである。故に、私は買い手には、基本的に自社の内部留保の3割程度を投資額の上限の目安にしていただきたいといつも助言している。
株式を100%取得し、とある会社を傘下に収めた場合、その後従来通り順調に業績が推移すれば良いが、場合によっては業績が悪化するケースも無きにしも非ずである。
また、人の取得を目的に買収したのに、PMIに失敗して人が大幅に流出した、みたいな事は多く目の当たりにしてきた。それが度を過ぎた場合、最悪のケースは当該企業を清算するという意思決定が求められる事となる。
清算し得る状態であればまだしも、清算には別途資金負担が必要なケースすら存在するし、当然この場合先ほど述べた通り親会社の投資有価証券は不良資産と化する。
これが最悪のケースである。
過去経験した不足のケースとして、買収対象会社の取引先が二社に偏重していたが、買収後すぐにそのうち一社の取引先の業況悪化により、その一社からの受注が0になったという事案がある。
当初想定していた利益が全く出ず、投資回収期間が10年以上に伸びたというケースもあった。
買収先の前オーナーに協力を仰いで立て直しを図ろうと買収したが、買収側のオーナーと馬が合わず、買収後すぐに前オーナーを会社から締め出した結果、従業員が大量に辞めたみたいな事も経験した。
すごく収益性の高い、技術力のある会社だと思って、高い営業権をつけて買収した結果、買収後受注がパタッと止まり、全然想定通りの収益が確保できないみたいな事もあった。
これらの様に、買収には多くのリスクが存在する。故に余力のある資金で投資をいただきたいというのが一点と、最悪のケースを考えて、予め対策を打っておくという姿勢は重要である。例えば、人が辞めた場合の手配の想定、取引先が剥落した場合の手配の想定など。同業の方がこういった対応はしやすい様に思う。
マックスさん、いつも有益な動画配信ありがとうございます。
詳しい回答にも深く感謝いたします。
「買い手のあなたにアドバイスをさせていただくとすると、最悪を想定して意思決定をして欲しい、という事である」
たしかにそう思います。
質問し、マックスさんに回答していただけたおかげで冷静になったというか頭の中がクリアになりました。
ありがとうございました!