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M&Aマッチングサイトの落とし穴

  • 2023/04/05

売り手がM&Aを実行する場合、基本的には専門会社や銀行などにアドバイザリーを依頼するケースがほとんどである。一方、近年においては、マッチングサイトが濫立しており、マッチングサイト経由での会社の譲渡も検討し得る。

対面のM&Aとマッチングサイトを活用したM&Aがあるわけだが、マッチングサイトを活用したM&Aが適する方とはどんな方だろうか。

まず、大前提としての話だが、マッチングサイトを利用する譲渡企業は、一般的な対面型サービスを利用する顧客と比較して規模が小さい、あるいは収益性が低いケースが多い。財務的に厚みがある企業群はほぼ100%と言っていいほど対面型のアドバイザリーサービスを依頼する。命の次か、命より大事な自社株式を譲渡するに当たって、アドバイザーからきめ細やかな助言を受けることで譲渡企業の社長の譲渡意思も固まるというものである。

故に、マッチングサイトに登録されている案件というだけで、通常の譲渡案件と比較して案件の質が低いと見られる可能性は十二分にあると考える。優良案件がネットに出回る筈は無いという色眼鏡で見られる可能性があるという事である。これはネットマッチングを行うデメリットである。

また、ネットマッチングで買い手が見つかったとしても、そのタイミングで一般的に交渉においてはアドバイザーを付ける事がほとんどである。専門家同士でないと話がまとまらない事が多く、売り手・買い手共にアドバイザーを付けて交渉をするケースが大半である。この場合に担当するアドバイザーは一般的には、通常のアドバイザーと比較して知見の乏しい税理士や会計士となる。

あなたの会社が、内部留保が厚く収益性も高い企業の場合、マッチングサイトでの譲渡よりは、通常のM&Aアドバイザリーを利用する方が、アドバイザーからよりきめ細やかな助言を受ける事ができるし、候補先に対してもあなたの会社の良さがしっかりと伝わる可能性が高く、結果として良い条件で譲渡できる可能性が高まると言える。

ではネットマッチングのメリットとは何だろうか。それは一言で言うと、手数料の安さである。大手専門会社等の手数料体系は、最低手数料2,000万円となるが、例えば譲渡価格が500万円の様な小規模事案であれば手数料の方が高くなってしまい、譲渡に踏み切れない。

一方ネットマッチングの場合、通常のアドバイザリーと比較して、手間暇かける工程を簡略化し、特に、最も付加価値が高いマッチングをネットマッチングする事により通常と比較して圧倒的に低い手数料での譲渡実行が可能となる。案件に応じて設定されるケースが多いが、譲渡価格が500万円であれば100万円とか、200万円と言う手数料での対応するケースも十二分にあろう。

そんなネットマッチングだが、案件数の増加により、非常に取り組み妙味が高そうな事案も増えてきている。通常のアドバイザリーに比べて価値評価などもザクッとしているが、今後テクノロジーの進化で、情報の質も更に高まっていく事が予想されるし、今後国内中堅中小企業のM&Aにおける、ネットマッチングが活躍する機会は多いにあろうと思う。