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中堅中小企業のM&Aのメリットとデメリット〜一般の方が知り得ないM&Aの舞台裏③〜

  • 2023/02/28

前回前々回では中堅中小企業のM&Aにおける、売り手から見たメリットとデメリットついて言及したが、今回は買い手のメリットについて考えを整理したい。

中堅中小企業のM&Aが急増しており、年々その件数が増加傾向であるという事は私のコラムの読者の皆さんであれば十分ご理解いただいている事かと思う。

売り手の増加要因は主に事業承継問題の顕在化が大きな要因を占めるという点は採算あらゆるところで語られているし、私もそのように説明をしているが、そもそもそういった譲渡案件について、買収ニーズが無ければ成約件数は増えないわけであり、買収によるメリットが無ければ買収ニーズも増えないわけである。

一方、事実としてM&A成約件数は伸びているという事であるから、やはりM&Aの買い手には、買収をする事による多くのメリットがあるという事であると思う。私も駆け出しの頃は、色々な教科書的な書籍を片っ端から読み漁っていた。目の前のクライアントに対して、経験がなくとも、専門家として振舞わなければ仕事を取ることができなかった為、何か専門家としての意見を述べる必要があり、その為の情報を書籍から得るという活動をしていた事がある。

そういった書籍に書いてある、M&Aの買い手側のメリットといえば、時間を買う、取引先を買う、スケールメリットを追求する、新商品を獲得する、など、まあ色々な事が記載されているわけである。

そういった情報は嘘では無いし、その通りなのだが、全て標準化された情報であり、抽象的な情報が多い為、今回は実務に基づいて、より具体的に説明してみたいと思う。

例えばM&Aが盛んに行われている運送業のケース。こちらを、投資回収という数的側面から考えてみよう。純資産4億円、営業権2億円で買い手が取得した事案である。

同社は元々営業利益で1億円ほど利益を計上している会社であったが、投資回収という観点から考えた場合、営業権2億円と手数料を3千万円と仮定すると、純然たる投資回収すべき金額は2億3千万円と考える事ができる。税後で6千万円の利益を計上する実力が当該企業にあると考えると、投資回収年数は約4年という事であり、それ以降は全額の利益が本間投資の利益と見る事が可能となる。

6億円の投資で、毎年税後利益が6千万円と見ても、投資利回16%という事であるし、純資産部分を考慮しないのであれば投資利回は実に26%となる。

何が言いたいかというと、準投資案件としてもM&Aは妙味がある事案が存在しており、投資案件として考えて妙味があるというメリットが存在する。

また、大手の同業が買収する事により、上述したスケールメリットを発揮する事で、買い手・売り手の売り上げを上げたり、コストを下げたりする事ができるメリットがある。例えば地理的な要因で相互に取りこぼしている仕事を融通しあったり、あるいはトラックなどを共同購買するなどして取得価格を下げる事により減価償却費低減に繋げるといったメリットも存在する。

また、買い手の経営方針の中であれば、現状の売り手のマネジメントの外側の方が力を発揮できる人材がいる場合は、そういった人的交流を通じてグループ全体として人材の活性化に繋がるというメリットもある。

今回は、より具体的にわかりやすくご理解いただく為にモデルとなる事案をベースにこ説明したが、M&Aによるメリットは業種業態、各社毎の意図に基づいて、色々なパターンが存在する。

もしあなたがM&Aでの買収をお考えなのであれば、私がお伝えしたいのは、M&Aはあくまでも経営戦略遂行上の手段であるという事である。買収の前に、まずあなたの実現したいビジョンがあり、その為の戦略があり、それを補完する手段の一つとしてM&Aは選択肢として検討されるべきであると思う。もっとも、具体的な案件を通じて戦略的なアイデアが浮かぶという事も当然あるので、その意味では、案件情報が持ち込まれやすい状態を構築するという事も重要かもしれない。